なぜ、今、
FC町田ゼルビアなのか?
「挑む者たち」ークラブが企業へ提供する“ストーリーの価値”とは

CHAPTER 03
CHALLENGER ― 東京の覇権に挑む者
「サッカーには、悪魔的な魅力がある」
日本を代表する経営者のひとりで、FC町田ゼルビアのオーナーである藤田晋が、自らの口で語った言葉である。
世界中の大富豪が、こぞってサッカークラブのオーナーになりたがる。ロシアの新興財閥、中東の王族、アメリカの投資ファンド―一体、なぜ、彼らは皆、サッカーに巨富や私財を投じるのだろうか?
藤田晋もまた、その一人である。
サイバーエージェントという、東証プライム上場のIT企業を率いる経営者が、約11億円を投じてJ2のクラブを買収した。2018年10月のことだ。
時間軸を、2018年に巻き戻したい。
サイバーエージェントがゼルビアの経営権を取得した直後、内部で密かに掲げられた壮大なビジョンがある。
2020年 J1昇格
2021年 J1参戦
2024年 J1優勝
2025年 ACL優勝
率直に言えば、当時、誰も信じてはいなかった。ファンも、サポーターも、サッカー界も、そしてメディアも。誰もがである。それまでのゼルビアは、J2の中位を彷徨うクラブにすぎなかった。そのクラブが、たった7年後にアジア王者になる―本気で口にすれば、嘲笑される話だった。クレージーと思われても仕方がない。
しかし、現実は―
2023年 J2優勝
2024年 J1初年度に3位
2025年 天皇杯初優勝
2026年 ACL準優勝(ファイナリスト・アジア2位)
後ろ倒し的に数年は遅れこそしたが、ほぼ計画通り、いや、計画を超える達成を見せている。
経営者はよく「夢を語れ」という。
だが、「壮大すぎる夢を、本気で実行できる」経営者は、いま、どれほどこの国にいるだろうか。
藤田晋の経営哲学を、最も端的に表す言葉がある。
「サッカーは、勝者総取りの超競争環境だ」
ビジネス世界の経営者がふと聞くと当たり前のように響くが、実は本質的な意味が含まれている。
勝つチームに、人が集まる。
人が集まるチームに、スポンサーが集まる。
スポンサーが集まると、選手の補強ができる。
補強ができれば、また勝てる。
この循環の入り口は、ただ一つ。
「勝利」だ。
綺麗事抜きにいえば、勝者がすべてを取る。勝てないチームは、何も取れない。
藤田晋がビジネスの世界で30年戦ってきた論理と、まったく同じ、シェアを取った企業がすべてを取る。シェアを取れない企業は、何も取れない。
この厳しい認識を、現場での大型補強と、得た利益の継続的な再投資で具現化したのが、FC町田ゼルビアだ。
サイバーエージェント買収当時、約7.5億円だったクラブの売上は、たった7年で売上69億円へ―約9倍に拡大した。サッカー世界でよく言われるのは、
サッカーチームは、経営者にとっての鏡である。
ただ、勝つだけでは、まだ足りない。藤田晋には、実はもうひとつの戦略があった。
「町田というひとつの街では、大企業スポンサーがつかない。東京全体を対象にすることで、クラブ経営を安定させる」
経営者なら、ピンと来るだろう。
市場をどこに設定するのか?このシンプルな問いに、多くの企業は、実は明確に答えられていない。
ゼルビアは、答えた。
「我々の市場は、町田ではない。東京である」と。
日本最大の経済圏、首都東京。そこには、すでに実力と歴史があるJ1クラブが他にある。FC東京。東京ヴェルディ。
東京の覇権―それが、ゼルビアが挑む戦場。
サイバーエージェントという、まさに東京を代表する企業との一体経営。デジタルマーケティング、コンテンツ制作、AI、ABEMA連携―これらを武器に、Jクラブ経営に丸ごと注ぎ込めるクラブは、まだまだ少ない。

ここから、本当の勝負が始まる。Challengerの道は、決して楽ではない。
2024年、J1初年度。ゼルビアは開幕から首位を独走し始めた瞬間に、激しい誹謗中傷にさらされた。新参者が、上位を脅かす―その事実だけで、ネット上には罵詈雑言が並んだ。
その渦中で、藤田晋はこう語っている。
「短期的にヘイトを収める方法は、負けこむことだ」
「結果を出し続け、J1に定着するクラブになった時に、ヘイトはようやく消える」
「理不尽な批判や誹謗中傷に耐え、長い時間を我慢する長期戦である」
これらは、すべての経営者に響くWordではないだろうか。この国では、間違いなく起こることがある。
新しいことを始めた時、必ず批判される。
変化を起こした時、必ず叩かれる。
業界の常識に挑んだ時、必ず嘲笑される。
それでも挑み続ける者のみが、最終的に「正しかった」と証明される。
Challengerとは、勝てる可能性に賭ける楽天家ではない。
Challengerとは、長期戦に耐え、結果を積み重ね、証明できない正しさを信じ続ける者のことである。

今、経営者の方々も、何かに挑んでいるはずである。
時に事実無根の批判にあっても、時に足を引っ張る連中の罠にハマっても、時にネガティブな攻撃を受けていても、新規事業の創出、市場の変革、業界の常識への挑戦を続ける。
挑戦には、必ず逆風が吹く。それでも結果が出るまで、時に何年もかかる。
ゼルビアのストーリーは、貴社のストーリーと、まったく同じである。
完成された強豪と組むのは、過去を称えること。
登り続けるChallengerと組むのは、未来を称賛すること。
町田から東京へ、東京から世界へ――今、青き熱気を持って挑み続けるサッカークラブが、ここに、ある。
執筆者情報
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