試合情報

–まずは試合の総括をお願いいたします。

「選手たちと入念に1週間の準備をしてきました。直近の対戦では敗戦で悔しい思いをし、同じ舞台で二度も同じ相手に負けることは屈辱以外の何物でもないですから、そういった気持ちを持ちながら選手たちも試合に入ってくれました。1点を争う展開になることは百も承知である中で、4日間にわたってPK練習もしてきました。そういった勝利への執念を出そうと用意周到に準備をしてきましたし、我々コーチングスタッフも選手と向き合いながら、この試合に懸けてきました。その中で選手たちが期待に応えてくれました。前半はなかなか決定機を作れずに焦れるような試合になりましたが、延長戦も覚悟していました。交代選手に関しても、あまり早く出すことなく、選手たちのコンディションを見極めながら、できるだけ時間を使った中での交替策を考えていました。焦らず、高揚感を出し過ぎることなく、延長戦に入れたことも勝利に繋がりました。0-0で試合が進めば必ずチャンスがあると、最後の最後まで諦めないことを強調してきた中で、後ろは焦れずにギャンブルせずにシンプルに戦い続けるようにと話してきた中で、昌子源を中心に選手たちが実行してくれたことがこうして結果に繋がりました。決勝点に関しては、林幸多郎がしたたかに相手の状況を見極めながらループシュートを決めてくれました。またオ セフンが追加点を決めてくれました。セフンに関しては、苦しい時期も続いていたと思いますが、今日の1得点1アシストでスランプを脱却できるという話を、笑顔を交えながら試合後のロッカールームでしてきました。我々が今日のような試合をすれば絶対にモノにできるというゲームができました。ただまだあくまでも決勝進出を決めたに過ぎません。また良い準備をして試合に臨み、この国立競技場で決勝戦を制し、駆けつけてくださったファン・サポーターの皆様に最高の笑顔を届けられるように、胸に星をつけられるように、クラブの歴史を変えられるように、決勝に臨みたいと思います。」

–お互いにチャンスが少ない試合になりました。これは2週連続で対戦した影響もあるのでしょうか。

「お互いの攻撃のポイントや狙いがある中で、カウンター志向のチームが対戦したことであまりリスクを冒すことなく、中盤で奪ったボールを前に素早く繋いでいくというアプローチは、勝ちたいゲームであればあるほど、そうなるだろうと想定して準備をしてきました。その中で我々としては相手に思いきって足を振らせないこと。クロスも上げさせないことを徹底してきましたが、CKを与えることが多かったのは反省点です。最後は体を張って守備をしていくということは、チームとして共有してきたことです。お互いに“1本中の1本”を決められるか、という展開になることは、チーム内でも話していましたし、まさにそういった展開になりました。」

–勝負どころをどう見極めながら采配を振るったのでしょうか。

「直近の対戦でも相手はオ セフンを嫌がるような様子でしたし、勝負どころを見極めながら起用することを考えていました。その中で一緒に途中交代で出場した(ナ)サンホも前向きにボールを拾うことでチャンスが来るだろうという狙いもありました。先発出場だった(藤尾)翔太と(ミッチェル)デュークも疲弊していたので、延長戦も踏まえた上で2人には長い時間出てもらうことになりました。采配というのはおこがましいですが、我々の起用法に意気を感じて彼らはプレーしてくれました。彼らの奮闘をうれしく思うのと同時に、こうして結果に繋がったことで、彼らも自信を持って決勝に臨めるのではないでしょうか。青森山田高校を率いている当時、新国立競技場の準決勝という舞台で私は負けたことがありませんので、その記憶を持って選手たちを送り出しました。ここはたくさん勝たせてもらったスタジアムですし、勝負運が選手たちに乗り移る形で決勝を戦えたらと思います。」

–スランプに陥っていたというオ セフン選手は、1得点1アシストの大活躍でした。

「チャンスの場面でシュートをフカしてしまったり、相手GKの守備範囲にヘディングシュートがいってしまったり、なかなかゴールを決められない状況になっていました。点を取るためのポイントは伝えてきた中で、明るい兆しや突破口が見えるためには1点を決めてほしいと思っていました。我々コーチングスタッフの期待を意気に感じたことでこうして結果に繋げてくれました。またナ サンホに関しても前からのチェイシングを頑張ってくれましたし、スキルの面というよりも、気持ちの面が大きく左右する試合でしたから、その中で決めてくれたことをうれしく思います。また補足になりますが、国立に詰め掛けてくださったファン・サポーターの方々はリーグ戦では悔しい想いをしたとは思いますが、今日の結果で新しい景色を見せられるチャンスを得られたことをうれしく思います。ファン・サポーターの皆様の期待に応えられるように、また決勝も奮起、奮闘したいと思います。」

–前回対戦に比べて今回は背後を使われる形が少なかった印象です。

「FC東京さんの前線は足も速く、ドリブルの能力にも長けている選手でした。相手と対戦する中で単純な駆けっこにならないように、後ろで“プラスワン”を作ることを徹底してきました。これまでのリーグ戦でも相手に入れ替わられる形を作られてきましたが、ここ数試合はそうなることがないように徹底してきましたし、状況に応じて前線の選手も後ろに入ることは辞さない姿勢でした。また準備に関しては、相手よりも素早く帰陣し、数的優位を作っていくことは相手のカウンターを阻止する意味では大きなポイントになりました。今まで以上に時間を掛けて練習してきました。カウンターから失点する形を作られないようにすることも、守備陣が合言葉として取り組んできた成果だと思います。」

–前回のFC東京戦では出番がなかった林幸多郎選手を先発で起用し、ヒーローになりました。先発起用の背景は？

「林幸多郎をウイングバックに起用してきた時期はありましたが、力を分散させながらリーグ戦では見せなかったようなものを天皇杯で見せていくこともそうですし、相手に脅威を感じさせなかったことで相手に脅威を感じさせることも1つのやり方です。林であろうと、増山朝陽であろうと、2人はまた違った怖さを持っている選手ですから、試合のたびにバリエーションを変えながら戦えるように、オプションとして持っておくのは良いことです。ロングスローに関しても林は一番飛距離が出ますし、精度も高いです。随所にロングスローで相手に脅威を与えることは、先日のルヴァンカップ決勝がそうだったように、ゴールを生み出すポイントになっているアプローチです。また誕生日だったことで今日は結果を残してやろうと目がキラキラしていた中で、絵に描いたような結果をもたらしてくれました。」

–決勝進出の瞬間はピッチに立っていました。決勝進出を決めた今の心境は？

「リーグ戦の前回対戦は負けていた中で2-0で勝てたことをうれしく思います。この1週間、しっかりと準備してきたことを発揮できました。」

–後半の途中からはマルセロ ヒアン選手ら、個性の異なる選手が入ってきましたが、3バックで協力しながらうまく守れていました。

「途中からスピードに優れた選手も入ってきましたし、前線にはいろいろなタイプの選手が相手にはいましたが、いつも通りの守備を発揮できたと思います。」

–天皇杯の頂点まではあと1勝に迫りました。

「ＦＣ町田ゼルビアにとっては、クラブ史上初めてのタイトルまであと一歩に迫っています。達成できるとなればクラブにとってはこれ以上ない偉業になるため、ファン・サポーターの皆様と喜び合いたいと思います。頂点に立つことは決して簡単ではないですが、我々はベストを尽くします。」

–見事な延長戦での先制点でした。ゴールシーンを振り返ってください。

「(オ)セフンがうまく落としてくれたので、迷わず飛び込んでいきました。(アレクサンダー)ショルツ選手がスピードを緩めたので、ボールに触れそうだなという感覚があり、その中で足を出しました。とりあえず触ろうという意識でした。日頃からどういうポジション取りをするのが良いだろうと、考えながらやっている成果ですし、その中で個人的には幅は広がっていると思います。」

–いつものことながら素晴らしい嗅覚です。

「無駄走りというか、ランニングすることで相手のズレを生むことができるので、そういったことは考えながらやっています。そういった点は自分の強みとして、量を出していくことは意識しています。」

–また1つ勝ったことで今後の波及効果もありそうです。

「勝利がついてくることで選手たちの気持ちも楽になりますし、その点でも価値のある勝利になりました。」