【酒井コーチのセルビア便り】ワイナリーから学ぶ

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Dobar dan.
Kako ste?

先日、セルビア代表も欧州予選を勝ち抜き、ロシアW杯出場を決めた。本大会で日本と同じグループリーグに入ったりしたら…。なんて考えるとワクワクするね。

今回の予選にも、ヴォイヴォディナアカデミー出身の選手が数名出場していた。10番を背負ったタディッチ(イングランド・サウサンプトン)、ガチノヴィッチ(ドイツ・フランクフルト)。今回は招集されていないが、ミリンコヴィッチ=サヴィッチ(イタリア・ラツィオ)、ラドヤ(スペイン・セルタ)もヴォイヴォディナアカデミー出身だ。その国の代表チームのMF全員を構成できてしまうレベルの選手達を輩出している。ワールドサッカーファンはぜひ注目して見て欲しい。

いきなりですが、なぜ乾杯の時にグラスを合わせるかご存じだろうか? 所説あるようだが、ワインの乾杯について一つご紹介しよう。

ワインは五感で楽しむ。仲間達と抱き合い乾杯できる喜びを体で感じ、美しいグラスに注がれる鮮やかな色を目で見て楽しむ。そして熟成したブドウを鼻で香りを楽しみ、口の中で転がしながら舌で味を楽しむ。触れて、見て、嗅いで、味わう。

あれ? 何か足りない? そう、グラスを合わせる音を耳で楽しむのだ。サラリーマンのおじさま達、ぜひ二次会の乾杯のスピーチに使ってください。

前置きが長くなったが、今回はこの話をキザに語るオーナーのワイナリーについて書きたいと思う。休日を利用して、セルビア人の友人とワイナリーをまわることが楽しみの一つになった。それぞれの地の利を生かしてこだわりのワインを作っているワイナリーがたくさんある。

僕が通うこのワイナリーは、祖父から3代続き、僕と同じ年の青年が引き継いでいる。無理な品種改良をせず、防腐剤を使わず、自然のままのワインを作っている。手間暇かかるので大量生産できず、市内のレストラン数店舗に卸す以外は流通しない。近所の住民がペットボトルを持って買いに来ることで生計を立てている。

夕方になると近所の人たちがペットボトルを抱えやって来て、オーナーと世間話をしながら試飲し、飲める分だけ買って帰る。ワインの需要が世界的に高まり、品種改良を繰り返したり、病気に強い品種を作ったりして、防腐剤を使った世界中に輸出できるようなワインを製造することがスタンダードになってきているが、このワイナリーは地域に密着し、自分たちのこだわりを捨てず、哲学を持ってワインを作っている。

サッカーの研修に行って、ワインの話? と思うかもしれない。でも、この話を聞いて何か感じることはないだろうか。サッカーとまるで同じなのだ。流行りに流されず、地域を大切にし、揺るぎない哲学を持ってブドウ(選手)を育成する。僕はこのワイナリーからたくさんのことを学んでいる。これを100年続けているヴォイヴォディナ・ノヴィサドだから素晴らしい選手達が欧州中で活躍しているのだ。

Jリーグが出来て24年。日本は安定的にW杯に出場することができるようになった。これから先、強豪国と対等に渡り合うには、アカデミーをどう構築していくかで決まってくる気がしている。ではまた。

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