【報告】価格変動制「ダイナミックプライシング」試験導入

チケット

日頃よりFC町田ゼルビアをご支援いただきまして誠にありがとうございます。

今シーズンの開幕戦から試験導入しております価格変動制「ダイナミックプライシング」によるチケット販売に関して、2月20日(日)vs琉球、2月27日(日)vs岩手、3月13日(日)vs岡山の導入結果を報告いたします。


■ダイナミックプライシングとは
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「ダイナミックプライシング」とは、需要に応じた適正価格を需要予測のデータを基に算出し、販売を行う仕組みです。
需要予測の算出では、過去の繁忙期・閑散期、日程、曜日、席種、天候、チームの状態、順位、対戦カードなど、需要に影響する変数のビッグデータ分析に基づいて見込み需要を推定します。また席種が複数ある場合は、それぞれの席種毎に需要予測を算出するための、席種毎の収容数も変数として取り込まれます。
販売開始時点の各席種価格は、これらのデータ等から決定され、販売開始後は実際の売れ行き、見込み需要に基づき変動していきます。

需要が高まった時や供給が不足している場合には価格を上げて利益を最大化し、逆に需要が小さくなった時や供給過多の場合は価格を下げて販売数を増やしていきます。場合によっては、競合の価格による変動や、供給する商品の価値の変化を価格に反映するなど、様々なパターンがございます。

「満席に近いから高くなる」「空席が多いから安くなる」と受け取られることが多いですが、そのような画一的なものは存在せず、あくまで需要の大小によって価格は算出されます。

尚、価格設定は、FC町田ゼルビアの過去のチケット販売実績と販売期間中の実績を基に、ダイナミックプラス株式会社の独自の価格算出技術を活用し行われます。
変動するデータおよびデータに基づくAIによる機械学習の予測精度を高めていくことで、市場ニーズにあった適正価格が算出されます。


■試験導入の経緯と目的
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2020年から続く新型コロナウィルス感染拡大により、スポーツ業界全体として観戦者が低下しています。そこに起因する形で、収益の減少、新型コロナウィルス感染拡大防止対策による支出の増加、という課題がございました。更に、スポーツ興行の特性上、試合運営経費においては固定費が多く、来場者数の状況でコストはさほど変わらないという状況もあります。
そこを改善すべく、安定的な集客を目指していくために、人気カード(好調な集客試合)ではなく不人気カード(不調な集客試合)の底上げを行うことで、改善を図りたいと考えています。
これらの課題を解決すべく、新たな打ち手としてダイナミックプライシングに着目し、昨シーズンから検討した結果、今シーズンより試験的に導入することといたしました。

その中で、ダイナミックプライシングに期待する効果は下記2点です。

① 販売数の増加と収益の拡大
② シーズンシートの価値向上

【①販売数の増加と収益の拡大】
過去の感覚や勘ではなく、様々なデータから導き出される見込み需要に基づいたチケット販売ができることで、販売数を増やし、それにより収益を獲得していくことを目指しています。収益が増えることで、チームの強化、ホームゲームのコンテンツやホスピタリティの強化など、ファン・サポーターの皆さまが今まで以上にFC町田ゼルビアを楽しんでいただける施策に取り組み、更に魅力あるクラブになりたいと考えています。

【②シーズンシートの価値向上】
今シーズン、2年ぶりにシーズンシートの販売を再開しました。従来と異なる仕様が多いことから、シーズンシートをお持ちの皆さまに対して、シーズンシートの価値をシーズンの中で高めていきたいと考えています。ダイナミックプライシングでは、試合単体のチケット価格が上下する中で、シーズンシートの価格を下回ることはございません。これにより、定価計算で約6試合分お得なシーズンシートが、それ以上にお得になる可能性もあり、価格面で更なる価値の向上を目指しています。そして、ヨーロッパのクラブのようにシーズンシートでスタジアムを満員にしたい、というクラブの将来像に向けたきっかけになればと考えています。

更に、先日リリースいたしました「3 GAMES TICKET(https://www.zelvia.co.jp/news/news-196107/)」のような施策と組み合わせていくことで、①②はもちろん、安定的な集客に対する効果がより高まると考えています。


■試験導入の振り返り
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【対象試合】
第1節 2月20日(日)vsFC琉球
第2節 2月27日(日)vsいわてグルージャ盛岡
第4節 3月13日(日)vsファジアーノ岡山

【各試合の価格推移】
購入サイトでは確認できない、変動する価格の推移を示したグラフです。どのような値動きがあったかがご確認いただけます。

<2/20vs琉球>

全体的に値上げ傾向での販売となりました。特にカテゴリー1では値上げでの販売割合が最大となり、価格としては、標準価格の40%の値上げまで進みました。一方、カテゴリー2、カテゴリー3では「値下げが販売数と収益増加に最適」という予測から、値下げが行われた期間もございました。

<2/27vs岩手>

販売開始直後は値上げ傾向にありましたが、販売期間中盤からはカテゴリー3、カテゴリー4では、値下げ傾向での販売となりました。カテゴリー1は上昇傾向からスタートしましたが、途中からは値動きがなく、一定価格での提供となりました。

<3/13vs岡山>

全体的に緩やかな値上げから始まりましたが、過去2試合と比べて値動きが少ない傾向となりました。その中でカテゴリー3、カテゴリー4では、これまでの試合と同様に、値上げと値下げを組み合わせて販売され、価格変動の動きが比較的多くなりました。


【価格変動の割合】
各試合で販売されたチケットのうち、「標準価格より値上げで販売されたチケット枚数(緑)」、「値下げで販売されたチケット枚数(赤)」、「変化がなかった(標準価格と同じ価格)で販売されたチケット枚数(グレー)」の割合のグラフです。
販売されたチケットが、標準価格と比較して「高い」「安い」「同じ」のどこのタイミングで販売されたかの割合を確認いただけます。

2/20vs琉球は、前項「価格推移」でお示しした通り、販売開始価格が標準価格を上回っていたこと、更に値上げ傾向が続いたため、値上げの割合が多い結果となりました。

2/27vs岩手では、値上げ、値下げがほぼ半々程度という結果でした。値下げでの販売となった43%は、ファン・サポーターの皆さま、クラブの双方にメリットのある理想的な状態でした。このエリアを増やしていくことが、今後の目標になると考えています。

3/13vs岡山では、値上げと変化無し(標準価格)がほぼ半々程度という結果でした。標準価格で販売が開始され、値下げと値上げの組み合わせから、最終的に標準価格に戻った席種もあることから、変化無し(標準価格)の割合が多くなりました。

3試合の販売結果のまとめとして、販売枚数が多かった順では、「岡山戦>琉球戦>盛岡戦」となり、収益効果が高かった順では、「琉球戦>盛岡戦>岡山戦」という販売結果でした。各試合を比較すると、席数が多くボリュームゾーンであるカテゴリー3、カテゴリー4の売れ行き(平均価格ないしは売上枚数)がポイントとなりました。


■昨シーズンとの比較
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オンラインで販売されたチケットの昨シーズン平均との比較です。
比較する昨シーズンのデータは、バックスタンドの供用が開始された「5月16日vsアルビレックス新潟」以降の試合としています。またビジターサポーターズシートは、今回の比較からは除外しています。

【販売数の効果】※小数第一位切り捨て
<2/20vs琉球>
オンライン販売総数:119%

<2/27vs盛岡>
オンライン販売総数:118%

<3/13vs岡山>
オンライン販売総数:115%

シーズンシートの販売もあり、試合単体で見た時に、チケット販売数は少なくなることが予想されました。しかしながら、各試合の総数としては、3試合を通して順調に販売が進んだ結果となりました。また席種毎で比較すると、カテゴリー1を除く全ての席種で販売数+13%と飛躍的に伸びた一方で、カテゴリー1は-14%という結果でございました。


【販売収益の効果】※小数第一位切り捨て
<2/20vs琉球>
オンライン販売総額:127%

<2/27vs盛岡>
オンライン販売総額:115%

<3/13vs岡山>
オンライン販売総額:100%

3試合のうち2試合で昨対を超える結果となりました。特に2/27vs盛岡は、標準価格よりも高値、標準価格よりも安値、で購入された方の比率がほぼ半々であったことから、収益の増加は値上げだけによるものではございませんでした。
更に、標準価格のみで販売した場合と比較すると、2/20vs琉球は+17%、2/27vs盛岡は+7%、3/13vs岡山は+4%と、価格変動により効率よく収益を獲得することができました。


■試験導入から見えた課題
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ダイナミックプライシングは、国内スポーツ業界において、まだまだ新しい領域です。早くから試験導入を検討していたにも関わらず、導入までの経緯や目的を、試験導入前にしっかりと皆さまにご案内できていなかったことは大きな反省です。こちらにつきましては、遅くなりましたが、本報告にてご案内ができればと考えております。

変動する価格は、データおよびデータに基づくAIによる機械学習の予測精度を高めていくことで、市場ニーズにあった適正価格が算出されますので、ファン・サポーターの皆さま、そしてクラブの双方にとってメリットのある試合を多くしていくためには、導入試合を重ねていかなければならず、ファン・サポーターの皆さまとクラブの双方にとって、納得感のある運用になるまでは時間がかかること、更に、AIによる算出のため、クラブとしてはその価格になった要因とアルゴリズムをどのように取得していくかという課題も見えました。

そして、もっとも大きな課題としては、開幕戦の「カテゴリー1」のように、上昇傾向が続き価格が高騰した場合に、高騰した価格による顧客離れや、新規の方にとって高いハードル感を与えてしまう可能性が挙げられます。価格の上昇には上限があること、そして高騰した価格が標準ではないこと、更に別の席種ではお得になっている可能性があることの訴求方法を検討する必要があると考えています。この課題に対しては、「3 GAMES TICKET」のようなチケット施策を定期的にご提供していくことや、シーズンシートのお得さを同時に訴求していくことで、解決の糸口を見つけていければと考えています。

課題は、本報告に記載したものだけではございませんでしたが、実際に運用してみた中で、特に感じた部分のみ記載いたしました。


■今後について
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FC町田ゼルビアでは、価格変動制「ダイナミックプライシング」でのチケット販売により、現在、クラブが抱えている課題の解決、そして導入の目的が達成できると考え、試験導入期間中ではございますが、今シーズンを通して採用することといたしました。
しかしながら、現時点で効果が取得できているのは開幕期3試合のデータのみですので、今後、クラブとして想定する効果が期待できないと判断された場合は、シーズン途中で変更することもございますので、予めご理解とご了承の程宜しくお願いいたします。

今シーズン、収容制限が緩和されているもののスポーツ興行への需要が戻ったわけではございません。2021年12月にJリーグより発表されました調査(https://www.jleague.jp/news/article/21414/)では、2019シーズンに実際に観戦した方のうち、2020-2021シーズンに観戦した方は、2021年10月時点で44.6%にとどまっています。また2021シーズンにおける新規来場者数の割合は、全体の約30%となっており、コロナ禍前の2019シーズンと比較すると回復しているのは6割程度となっています。来場のハードルとなっているのは、やはりコロナ感染に対するリスクの不安が大きいものとなっている一方で、5割弱の方が「制限が多く楽しめない」ことを理由に挙げられています。

FC町田ゼルビアでは、コロナ禍前のチケット収入にしっかり戻していきながら、増加した収益でコロナ感染リスクへの不安を解決できるような対策を講じ、更にスタジアム観戦の楽しみを提供していくことで、チケット価格以上の価値や楽しみを「天空の城 野津田」へご来城の皆さまにご提供できるよう尽力する所存ですので、今後ともFC町田ゼルビアに対します厚いご支援、ご声援の程、何卒宜しくお願い申し上げます。

 

■Q&A
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