○試合後の記者会見:黒田剛監督

–まずは試合の総括をお願いいたします。
「3-0という素晴らしい結果をもたらしてくれた選手たちに感謝の気持ちを伝えたいと思います。また後半の終盤から大雨が降り出す状況にもかかわらず、最後まで声援を送って下さったファン・サポーターの皆様にも心から感謝の気持ちを申し上げたいです。私が監督に就任して以降、今まで清水さんとの戦績は1勝1分1敗と五分の状況でした。また前回対戦は終盤に失点を喫したことで勝ち点3がこぼれ落ちる状況になっていたため、あの時の感情を選手たちに思い出させて噛み締めるように今節に臨ませました。前半は相手にボールを掌握される時間は長くなった中でも粘り強く戦うことで無失点に抑えることができたのは良かったです。先制点はセットプレーの展開から菊池流帆が決める形になりました。流帆は攻守にわたって高さで迫力をもたらす存在ですし、モチベーターとしてチームを鼓舞できるパワーを出場していた前半に発揮し、素晴らしいプレーをしてくれました。後半は体調が思わしくないということでドレシェヴィッチに代えましたが、交代で出場した選手たちも自分の仕事を全うしてくれました。前半は暑さの影響か、ボールを奪った後も単純なボールロストをする場面もあった中でチャンスを作れずに危ない場面を作られましたが、後半に向けて修正することができました。その結果、後半は前半よりもボールを奪った後に自分たちのボールを繋げるようになりました。さらに選手たちは自分たちのボールをしっかりと掌握していこうという指示を忠実に実践してくれました。最終的に消耗する時間帯で選手交代をどうしようかと考えている中で、終了間際に恵みの雨と言いますか、ピッチ上を冷やしてくれるようなありがたい状況になりました。その結果、選手たちは大きく疲弊することなく、最後まで戦い抜くことができましたし、前からのプレスを軸に守りながらも、スイッチを入れる形で途中出場の沼田駿也も追加点を決めてくれました。沼田はJ2でプレーしている頃から苦しい想いをしていた選手です。今日の1点は彼にとっても、とても励みになったと思います。チーム全体が勇気づけられる1点になりました。次の第24節は約10日間の間隔が空いた上での試合となります。コンディションをしっかりと整えて、間の天皇杯の富山戦を戦い、リーグ戦では次節の東京ヴェルディ戦に向けて、一戦必勝で勝ちきれるようにネジを巻き直して、試合に臨めるようにしたいと思います」
–前半は相手のシャドーの選手にボールを持たれる形から前進されていました。後半に向けて、ハーフタイムではどんな指示があったのでしょうか。
「思った以上にシャドーだけではなく、ボランチも一気に背後を突いてくるフリーランをする形も多く、ポケット周辺にもランニングされていました。マークの受け渡しとボランチがどこまでケアをするか。そういったことを修正しました。最終的にはボックスの中央を絶対に空けないことを焦れずに固め続けられるように徹底させました。またカピシャーバ選手からのアーリークロスが入ってくることも想定されたため、危険なポイントに入ること、人をしっかりとケアすることも徹底しました。そして1-0で後半に折り返しているけれども、絶対に守勢に回らずに前から圧力を掛けていくことを意識させました。ボールを取りきれないことで間延びすることを避けるように、藤尾翔太を含めて、一度中央を帰陣し、陣形を整えてからミドルプレスにする方がコンパクトな状況を保てるため、そういったことも徹底しました。その結果、後半は大きなピンチを作られることもなく、中央でセカンドボールを回収できたことが功を奏したと思います」
–先制することや守りきれている状況は町田らしさが戻ってきていると言えると思います。その理由を言語化していただけますか。
「チームのコンセプトはJ2の頃から基本的に変わっていません。相手のレベルも上がっていた中で、最終ラインも最後の時間帯でなかなか我慢ができなかったことによる失点がありました。大きく崩されたような形はなく、1人ひとりの自覚や意識の部分が噛み合わなかったり、甘さや緩さといった自滅したような失点や敗戦が多かったため、そうならないための整理をしました。またゴール前のクロスに対する入り方も整理しましたし、考え方や危険なエリアを埋めるためのポジションの整理もしました。あとはウイングバックが攻撃に転じて攻撃に関われていることが大きいです。昨季までは見られなかった現象が望月ヘンリー海輝や林幸多郎のポジションで出るようになりました。彼らがかなりゴール前に絡めていることは大きな変化です。さらには相馬勇紀や西村拓真という2シャドーがいることでウイングバックの攻撃の形も生きています。相手も下がらざるを得ず、強気に出られないこともありますし、活性化されるような現象が生まれています。守備に時間をパワーを使うことで攻撃に転じられることを選手たちが信じて出て行けるようになってきたことも後半戦の4連勝に繋がっていると思います」
–前節の新潟戦後に「次の試合で勝てば首位の背中が見えてくる」とお話しされていました。実際にこうして勝つことができました。この結果をどう受け止めていますか。
「勝点37まで乗せることができました。他会場の結果も出ていないために比較はできませんが、こうしてチームとしての調子を取り戻し、怪我人が戻ってきていることも含めて、他チームは町田のことを意識しているでしょう。昨季は3カ月近く、首位を走っている中で危機感を持っていましたし、上を走るチームには心理的にしんどい部分があると思います。ただ上を見据えながらも、目の前の試合で勝利を積み重ねていくことによって、首位の背中を触れる日が来ると思います。その日に向けてしっかりと良い準備をしていきたいです」
以上
○清水エスパルス:秋葉忠宏監督 会見要旨
「守備が崩されたわけでもないですし、攻撃面でも全くチャンスを作れていないというわけではありませんでした。だからこそ1点が持つエネルギーの大きさを実感する試合となりました。町田さんはセットプレーからの先制点で息を吹き返しました。一方で我々はチャンスで決めきれず、最後は後ろの我慢が利かなくなってしまいました。決めるべき場面で決めることで我慢も利きますし、ゲームに大きな勢いが出るものです。先制点を取られた場面はもったいないファウルからFKを与えた結果ですし、特に前半は仕留めるチャンスがありながら仕留められませんでした。ゴールを奪われないこと、ゴールを奪うことによりこだわることを徹底していきたいと思います」
以上
▽選手コメント
○菊池流帆選手

–前半のみの出場でしたが、先制点を取る活躍でした。
「交代の理由は体調不良でした。試合前からしんどかったですが、前半だけでもプレーしないと、と思いながら頑張りました。「どうするダビド?(菊池のニックネーム)」と問い掛けましたし、さっさと点を取ってピッチから去ろうと思っていました。(ゴールシーンは)飛んでおこうとヘディングしてポストに当たって、こぼれ球に対して突っ込んでいました。“リバウンド王・桜木”(漫画『SLAM DUNK』の名台詞)が出ましたね。試合を通して声も出せないぐらいでしたし、難しい試合にしてしまったのは自分の責任です」
–貴重な先制点は移籍後初ゴールです。
「決めたのは良かったかもしれませんが、自分が弱過ぎます。この後、(黒田剛)監督にも怒られるかもしれませんね…」
○沼田駿也選手

–終盤の途中出場でJ1初ゴールを記録しました。どんな気持ちでピッチに立ちましたか?
「自分が怪我で戦列を離脱してからチームが3連勝をしていたので、自分の存在価値を証明しないと、もっと立場が難しくなるだろうという中で、こうして結果に繋げられたのは良かったです。2-0で勝っている状況で相手の圧力を受ける時間帯でもありましたし、相手をひっくり返すような働きができたら良いなと思っていました。ゴールは思っていたような形ではなかったですが、決まってホッとしています」
–ゴールは積極的な姿勢が実った形でしょうか。
「前半も苦しい時間帯があった中で、しっかりと防いでくれた仲間たちに感謝したいです。チームメートの奮闘があったことでありがたいことに自分のところにボールがこぼれてきました。こうしてJ1初ゴールを決められたことにみんなに感謝したいです」
–J1初ゴールの光景は?
「正直、あまり覚えていないです。昨季のJ1初年度は町田で全然貢献できなかったですし、シーズン途中に鹿児島へ行って、自分の力不足をより痛感しましたが、こうしてJ1の舞台で結果を残せて良かったです」
以上