○試合後の記者会見:黒田剛監督

–まずは試合の総括をお願いいたします。
「前節の名古屋戦から右SBには望月(ヘンリー海輝)に代わって鈴木準弥を起用し、5-0だった前回対戦の際も、彼の配球やクロスからチャンスになっていたため、クロスに対して、藤尾(翔太)や(ミッチェル)デュークを飛び込ませる狙いを持って、先発で送り出しました。それが功を奏する形で、相手の事故のようなオウンゴールを誘い出したことが我々にとっては大きかったです。かなり湿度が高く、疲弊してきた選手も出てきたため、後半途中に3枚代えを実行し、息を吹き返した上で前からプレッシャーに行けるようにメンバーを代えました。それでも疲弊が早かった印象です。後半はヴェルディさんの持ち前のパスサッカーが出てきた中で、GKを含めた守備陣が粘り、守勢になりながらも、1点を守り切って1-0で勝ち抜こうと試合を進めていました。追加点を取れれば理想的でしたが、1-0でも勝ち切る我々の勝利の方程式をハーフタイムにもう一度再確認しながら、選手たちを送り出しました。2点目を取ることよりも、1点を守り抜くことが次のゲームに繋がっていくということを、選手全員がそう捉えて実践してくれました。今日は町田から約4,000人のサポーターの方々にお越しいただき、最後まで声を枯らして応援していただいたことが、選手たちの奮起に繋がりました。皆様の応援に感謝すると共に、次節の試合会場である国立競技場はまだ勝ったことがないスタジアムですが、そこで結果を出せるように頑張っていきたいです。パリ五輪には藤尾が出発します。平河(悠)もチームを離れ、穴が出てくるかもしれませんが、チームが一体感を持って、また一丸にもなれるタイミングですので、しっかりと改めてまとまれるようにチームをマネジメントしていきたいです」
–ハーフタイムにはどんなメッセージを伝えて、選手たちを送り出したのでしょうか。
「やってはならないことは、リスクを冒すことです。前半から相手のロングボールが入ってくる中でボールの処理ミスが何度か見受けられたため、相手にチャンスの糸口を探られて進入される機会もありましたから、選手たちにはしっかりとしたロングボールの対応を促しました。また相手を引きつけ過ぎて事故のような形が起きることがないように、食いつきが良い相手のウイングバックの背後をシンプルに突いていくことを徹底しました。我々の勝利の方程式のスコアは1-0ですから、先制の1点で十分過ぎるほどですし、リードを活かして無失点で守りきることが町田のコンセプトでもあります。前回対戦同様に、選手たちは町田のコンセプトを忠実に実践してくれました」
–2点目を取ることよりも、1点を死守するというお話がありました。VARもありますし、現代サッカーはいつ1点が入るか分からないものですが、それだけ守備に自信があるということでしょうか。
「例えばクロスの守備1つを取っても、クロスからの失点はないですし、そういった我々の強みや町田の守備コンセプトをしっかりと遵守することによって、失点は絶対にしないと、選手たちも確信を持ってやってくれているため、このプランが成立すると思っています。前方に人数を掛け過ぎて、カウンターを食らうことは我々にとっては一番のハイリスクです。前線からのプレスについては、行くべき場面では行きますし、できるだけ相手の陣地でサッカーをすることはプランとしてありますが、森田晃樹選手が入ってきた後のヴェルディさんは、より中央を攻略しようとするサッカーを志向してきました。中央を使われる局面があったことは、これからの反省材料として、やるべきことを再認識し、徹底するべきことは反省ミーティングの中でしっかりと落とし込んでいきます」
–黒田監督が指揮しているチームから藤尾選手や平河選手がパリ五輪に出場します。町田でやられていることが世界に繋がっている点に関して、コメントをいただけますか。
「起用してきた選手が評価される形で代表に招集されるのはありがたいことです。この町田で志向してきているサッカーもそうですし、松木玖生も青森山田で志向してきたサッカーは、ただ単にうまいだけではなく、強いというスキルが身につくものです。そういったスキルが日本代表に必要とされる形で招集されていると思います。ここまで落とし込んできた成果が着実に実っていると思いますし、ここまで落とし込んできたことが世界に通じる能力、スキルだと実感しています。我々が普段から取り組んでいる練習や強いサッカーをすれば、必ず世界でもチャンスがあると、選手たちが奮起する材料になるため、非常に良い効果が町田の中に生まれている実感があります」
–無失点の背景には、谷晃生選手のファインセーブがあったことも見逃せません。
「非常に堂々としていますし、我々が落とし込めない駆け引きの部分などは、すでに感覚として持っているのだと思います。我々にとってはありがたく頼もしいGKです。何のストレスもなく起用できますし、練習の姿勢や立ち居振る舞いも模範になります。彼の精神が充実しているからこそのファインセーブです。彼の努力がこの功績に繋がっていると思います」
–谷選手に関しては、クロス対応も素晴らしいのでは。
「データでもクロスに対するセーブ数は、リーグトップと聞いています。またクロスに対応しやすい守備の配置をできていることも大きいです。彼にとって、2つ、3つの選択肢があると迷うと思いますが、思いきってクロス対応を選択できる守備陣の配置をしている効果もあると思います。GKと守備陣の連係や配置が功を奏しています」
以上
○東京ヴェルディ:城福浩監督 会見要旨
「ヴェルディの関係者、応援して下さる方々に悔しい想いをさせてしまいました。多くの後押しがあったにもかかわらず、やれた感がある中での勝ち点ゼロはなかなか厳しい結果です。決定力が足りなかった、また決定力がある選手がいれば…、というのは簡単ですが、それを言ってしまえば、私の存在価値はないと思っています。最後に決めきる力、体がつぶれても良いぐらいの気持ちでゴールに前に入っていく。あれだけ決定機があったのに…という反省点は、私の指導の至らなさだと思っています」
以上
▽選手コメント
○谷晃生選手

–谷選手のファインセーブもあった中で、クリーンシート勝利で終えました。
「0-0で試合が進めば何かが起きると捉えているチームですし、守備陣としてはとにかく無失点で終わることを意識しています。またこの結果はチームの自信に繋がると思っています」
–先制した後の試合運びはいかがでしたか。
「先制した後はやるべきことがハッキリしますし、より相手も点を取らないといけないと、前掛かりになることで自分たちに優位に働く部分はあったと思います」
–この試合を勝ちきった意義は?
「神戸さんが札幌さんに引き分けたりしている中で、勝つことで勝ち点差を広げることができます。仮に引き分けていれば、他のチームとの勝ち点差が縮まる中で、勝てたことの意義は大きいと思います」
○鈴木準弥選手

–決勝点のオウンゴールを誘発した場面は、まさに“一撃必殺”のクロスと言えるのでは。
「それを期待されての先発起用でしたし、実際の結果に繋がって良かったです。ただチームとしても、個人としても、できることはまだまだあったと思います。それでもこういった苦しい試合を勝ちきれて良かったです。クロスを上げる回数をもっと増やしたかったですが、“1本中の1本”と言えるようなクロスを入れることはできたと自負しています」
–ゴール前までの距離もあった中で、早めのタイミングでクロスボールを入れました。
「特に1本目のチャンスが来た時は、迷わずにまずはクロスを入れていこうという気持ちでいました。そうした気持ちがあったからこそ、あれぐらいの距離があっても、迷わずにクロスを入れることができました」
–前節の名古屋戦は出場停止でしたし、先発で出られない時期もあった中で、外からチームを見ることで新たな発見はありましたか。
「試合に出られない時期があったからこそ、自分が出た時にやるべきことをしっかりと整理できたと思います。出られない時期は出ている選手が良く見えることもあります。それでも自分の良さを見失わずにやってきましたし、次の試合がどうなるか分からない中で、僕自身はこの試合に懸けて準備をしてきました。その中で1つの結果に繋がって良かったです」
以上