【トップチーム創設30周年企画】守屋実の未来への言霊(第2回)

メディア

FC町田ゼルビアは今年、トップチーム創設30周年を迎えました。
本コーナーではクラブ創設者の一人である守屋実相談役に、これまでの歴史を振り返ってもらいます。
どんな想いでこのクラブが作られ、市民クラブとしてどう成長し、Jリーグクラブとなり得たのか。
生き字引と言える守屋相談役からの“言霊”を心に刻み、今後の50周年、100周年につなげたいと思います。
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【第2回 クラブの原型・FC町田のルーツ】

今回は、クラブの全ての原型となったFC町田トレーニングセンター設立の経緯と、 のちに少年サッカー界で確固たる地位を築くことになるFC町田について、お話いたします。

1970年代の後半当時、少年サッカーの勢力図は、静岡の清水を中心に回っていたと言っても過言ではない状況でした。“少年サッカーの街”を自負する町田の単独チームは、意気揚々と全国大会に臨むも、清水FCという全国大会優勝の常連チームにその行く手を阻まれてきました。

町田もいつしか、清水に追いつき、清水を追い越す存在になりたい。どうすれば、町田のプライドは保たれるのか。

重田貞夫先生や私がその解決方法を探る中で、まさにライバルの存在がそのヒントとなりました。

清水FCというクラブのルーツは、地元の選りすぐりの選手たちが集結して結成された選抜チーム。さらに彼らを率いる指導者は“清水サッカーの生みの親”とも言える堀田哲爾氏で、清水FCは清水の教員が中心となって創設されたチームでした。重田先生も私も、もともとは教員ですから、似たような境遇であるため「仮に町田の選抜チームを結成すれば、清水FCにも太刀打ちできるんじゃないか」と思い立ちました。

そこで、重田先生と私は町田の選抜チーム発足を町田サッカー協会に提案しました。もちろん、ある程度、周囲の反発があることは予想できましたが、粘り強く町田サッカー協会の方々と議論を重ねた結果、1977年にFC町田トレーニングセンターが発足しました。

設立当初は町田の少年団チームに所属する選手たちを集めて、合同練習に取り組むトレーニングセンターとしての活動にとどまり、78年にFC町田という名で選抜チームを結成。同年の2月に藤枝JC杯という大会に初めてチームとしてエントリーしたのです。

同大会では、長谷川健太(現・FC東京監督)、大榎克己(現・清水エスパルスゼネラルマネージャー)、堀池巧(現・順天堂大学サッカー部監督)で形成された“清水三羽烏”を擁する清水FCに勝利し、大会自体も優勝という最高の結果で終えることができました。

その清水FCとの試合は、いまでも鮮明に記憶が残っています。超ロングシュートが決まる形で奇跡的に1-0での勝利をおさめる形にはなりましたが、この勝利をきっかけに、町田サッカー協会の中にも「方向性は間違っていない。町田も一つになれば、やれるんじゃないか」という機運が生まれ始めました。その後は藤枝JC杯での活躍が一つのきっかけとなる形で、FC町田を一つのチームとして登録し、全国大会に出場するようになりました。

78年開催の第2回全日本少年サッカー大会に初出場を果たしたFC町田は、同年の同大会で準優勝という好成績をつかむことができました。その後も力をつけたFC町田は、全国大会の常連として知れ渡る存在となり、81年の第5回大会では遂に念願だったチーム初優勝を成し遂げたのです。ちなみに、準決勝では常に我々が目標として定めてきた清水FCを撃破し、決勝では茨城県代表の古河少年団との関東対決を制しました。

全日本少年サッカー大会で初優勝を飾った当時のチームは、技術も高く、想像力を大事にしており、町田のサッカーの原点とも言えるチームでした。とはいえ、FC町田は選抜チーム。常日頃はそれぞれが町田の少年団チームとして、しのぎを削っている間柄です。

しかし、選抜チームを結成すれば、一転して協力的となり、町田のために団結し、滅法強かった。そもそも当時の町田の少年団はそれぞれのレベルも高く、それぞれの特色を生かしたチーム作りがFC町田でできていたからこそ、選抜チームとしての結果につながったんだと思います。

そしてこれは指導者として携わってきた重田先生や私も自負してきたことなのですが、FC町田は創造性と技術を大事にしながら、横パスから相手を崩していく一線を画したアプローチでチームを作っていました。そうした我々のチームスタイルは、当時の少年サッカーの潮流に風穴を開けたと言っても差し支えないでしょう。

次回はFC町田のチームスタイルが、少年サッカーの潮流にどんな影響を与えたのか。また重田先生を中心に、FC町田はどんな理念の下に発展を遂げてきたのか、お話ししていきたいと思います。

-----続く-----

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